福祉の街 社長ブログ

厚生労働省「高齢者虐待に関する調査結果」から

 

 こんにちは。前回「人の居場所つくり」に関係して来期の利益計画作成に触れましたが、その利益計画も本日最終提出。あっという間にそういう時期になりました。

 

 ところで最近、虐待に関する報道が多く見受けられます。高齢者そして児童、乳児。

5日、厚生労働者が平成26年度高齢者虐待に関する調査結果を発表しました。平成26年高齢者虐待と認められた件数は、養介護施設従事者等によるもの300件と、ここ2年で倍増しています。その内容は、身体的虐待が63.8%、介護等放棄が8.5%、心理的虐待が43.1%、性的虐待が2.6%、経済的虐待が16.9%となっています。全体的には養護者(家族等)による虐待が15,739件と圧倒的に多いのですが、前年からは8件増という結果であり、要介護施設従事者による虐待の増加が気にかかります。私たち介護事業者は、この事実をきちんと受け止める必要があります。

 当社もセントケアグループの企業として、虐待兆候の早期発見・報告や虐待防止研修等、取り組みを行っています。今回は少し私の考えるところを述べたいと思います。

 施設介護者による虐待件数.PNG

 

(男性、若年層の介護者による虐待)  

 まず今回の調査結果で注目されるのは、介護従事者全体に占める男性の割合が21.9%であるのに比して、虐待者に占める男性の割合が59.3%(192人)と、男性の割合が高いという点です。また虐待者の男女別年齢についてみてみると、介護従事者に占める「30歳未満」の男性割合が19.6%、女性に割合が8.7%であるのに比して、虐待者に占める「30歳未満」の男子絵の割合が34.4%、女性の割合が17.3%であり、虐待者は男女ともに「30歳未満」の若年層の割合が高いことがうかがえます。

 私はこの結果は、「子育て経験」の有無に関係しているのではないかと思っています。介護は、高齢者のリズムに合わせる必要があります。しかし介護者からするとそれは大変なことであり、ストレスを抱える要素になります。子育ても同じです。子供は親のペースなどかまってくれません。ですから、子育ての経験を積んだ特に女性は、高齢者の介護においてある種、相手のリズムにいい加減で(=良い按配でという意味です)付き合っていけるのではないかと思うのです。逆にその経験の少ない男性や若年層は、その加減がわからずにストレスを抱え、その結果として虐待に繋がっていく。私の見方です。

虐待者の性別.PNG

 虐待者の年齢.PNG

 

 (小規模施設における虐待リスク) 

  もう一点は、小規模の施設の問題です。高齢者介護でも児童養護でも、流れは施設のケア単位の小規模化、家庭的運営、グループケアです。もちろん、少人数による落ち着いたケア、本人中心のケア(パーソン・センタード・ケア)が実現でき、とりわけ認知症ケアでは有効です。

しかしながら、少人数・家庭的というのは人間関係が上手くいっている時には良いのですが、こじれた場合には逃げ場がありません。そして閉鎖的になりがちです。そこに虐待を生む要素が孕んでいるのではないかと思うのです。

 児童養護に関してですが、小規模化にあたって、いくつかの「虐待」にも繋がるような課題が厚労省社会保障審議会児童部会の専門部会(平成24年11月)にて指摘されています。

・職員1人での勤務が多く、またその役割が生活全般にわたるため、職員の力量が問われる。

・ホーム内でのできごとが周囲に伝わりにくく、閉鎖的あるいは独善的な関わりにな

 危険性がある。

・人間関係が濃密になり、やりがいもあるが、職員の心労も多い。

回の厚労省の調査で、虐待被害者の77%が認知症高齢者であったことを重ね合わせると、認知症を対象としたグループホームや小規模多機能 

居宅介護のような小規模施設の運営においては、相当の配慮が必要と言えます。 

 

 

(みんなで高齢者に向き合う)  

 虐待は決して許されものではありませんが、「虐待する人は悪い人」という短絡的な見方では、虐待は解決しません。そもそも人は「他人のために」という福祉的な相手を思う心と、一方で「誰も見ていなかったら・・・」というような独善的で自己中心の心とが、同居しています。ですから人生経験の少ない若年層に限らず、「人はそもそも弱く不完全である」という前提にたって、どうカバーしあっていくのかという視点がとても大事なように思います。

 

 介護者の孤立感を軽減するためには、例えばグループホームと小規模多機能を併設するなど施設の複合化を図り、小規模ケアの良さを残しつつも、一定の規模で運営することも必要でしょう。また、運営の透明性を確保するためには、地域との交流を図っていくことも有効でしょう。当社のグループホームでは、18名の入居者のほか、施設をデイサービスや認知症カフェとして地域の方々に利用いただくなどして、運営の透明性確保に努めています。しかし、虐待防止に完璧はありません。

 

  「人材不足がすぐに改善されない以上、技術的な伝達を現場レベルで行い、育てていく。家族も施設に任せきりではなく、施設職員とともにケアに向き合えば、虐待防止につながっていくのではないか」 6日産経新聞に掲載された武蔵野大学本多勇准教授のコメントです。

家族介護にしても、施設介護にしても、地域のみんなで高齢者を見守り、向き合っていければ、特定の介護者だけが孤立することもなくなり、相手の高齢者のリズムに合わせる心の余裕も生まれ、虐待も少なくなっていくのではないかと、・・・私は思うのです。

 

平尾 雅司