福祉の街 社長ブログ

「保育士処遇改善 月6千円」に思う

 「保育園落ちた、日本死ね!」以来、保育所・保育士の話題が続いている。国は「ニッポン一億総活躍プラン」を掲げ、2017年度までに保育の受け皿を50万人分整備するとしている。しかしながら保育用地、保育士の確保がままならず、受け皿となる保育所の整備は追いついていない。市川市(千葉県)では、近隣住民の反対で開園が中止になった。近隣住民の理解を得るのは大変である。

一方、保育士の確保に関しても、保育士の有効求人倍率は2倍を超え、保育士不足は深刻である。保育士不足の大きな要因は責任が重い上に、処遇の低さにある。民間の保育士の平均給与は、全産業平均に比べて11万円の格差がある。

現政権は消費税引き上げを見送っても、保育士の月+6千円の処遇改善は最優先で行うと言う。+6千円の処遇改善でもないよりあった方がいいと思うが、11万円格差と言う中でどれほどのインパクトがあるのだろうか。国は「ベテラン保育士は全産業の女性並となるよう4万円引き上げる」と言うが、私もこの理屈?には違和感を覚える。

 

(認可保育所の仕組み)

ところで認可保育所は公定価格=保育単価が定められ、利用者負担額との差額を公費(国・都道府県・市町村)で賄う仕組みになっている。公費の割合は約6割(平成25年度予算ベース)である。(参照:厚生労働省資料s8.pdf

保育単価は、4歳児以上だと園児1人あたり月39,210円と、児童の年齢階層ごとに定められており、それに園児数を乗じた金額が保育所の収入となる。一方、保育の質を担保する観点から、保育士の配置基準が定められている。認可保育所では乳児は3人、1~2歳児は6人、3歳児は20人、4歳児以上は30人、に対し1人の保育士を配置しなければならない。  

このように認可保育所は、国が公定価格と職員配置基準を決めているので、おのずと職員1人あたりの収入=生産性が決まり、結果保育士の人件費(≒給与)も決まってしまう。事実、国は保育単価算出の根拠として、保育士一人あたりの給与水準を想定している。

 

(公定価格への反映)

私は、国は保育士の給与を引き上げるにあたって、補助金で月6千円増やすというような一時的な策ではなく、公定価格=保育単価に反映すべきと思っている。公定価格にきちんと反映されてこそ、保育という大切な仕事の社会的評価と適正な給与水準が認知されると考えるからである。加えて言えば、補助金による給与引き上げは不安定であり、それが継続される保証はない。 

 

保育士へのアンケート(ほいくみー運営部)によると、保育士給料の希望増加額は月7万円という。この金額は、全産業平均給与や保育士労働市場の需給バランスからすると、理解できる範囲である。仮にこれを公定価格に反映し、そのうち6割を公費で負担するとすれば、残り約3万円は利用者が負担することになる。粗っぽい計算になるが、1人の保育士の給与増を10人の利用者で負担しあうとすれば、利用者も今より月3千円多く負担しなければならないことになる。公費負担の財源確保も必要である。国や国民は保育が大事と言うが、そのような覚悟をもっているのだろうか。政治やマスコミは、国民受けの悪い本質の話をいつも素通りしていく。 

勿論、どんな制約があっても経営の努力・創意工夫は必要である。保育士自身も専門性や付加価値を高め、保育の社会的評価を高める努力をしなければならない。しかし+7万円は到底無理だから、とりあえず補助金による月6千円の給与増と、保育士の叙勲受章者を倍増するというような話で、本質の問題を逸らし続けるならば、結局は先が見えない中で保育士の善意の頑張りに期待するしかなくなる。それでは、保育士にしわ寄せしている現状となんら変わることはない。

 

介護保険も平成30年の改正にむけて既に動き出している。公定価格と職員配置基準があり、また処遇改善が議論されている点では、介護も保育と同じである。

平尾 雅司